第2版への序 現在までに,我々の本に対して,学生や教育者,そしてもちろん友人たちなど,各方面 より数々の意見や感想がよせられた.我々は,これらの人々の褒め言葉ばかりでなく,批 判に対しても深く感謝している.教育の手引きや章末の問題の解答に対する要望も,多数 受け取った.この本が出版されてからも,半導体物理は発展を続けており,内容を刷新す ることの必要性を感じている.読者が常に最新の情報を受け取れるように,Webページを 設けた.(この序文を書いている時点での)アドレスはhttp://pauline.berkeley.edu/te xtbookである.現状ではこのWebページに, (1) 目次,概要,抜粋 (2) いろいろな雑誌や学術誌に載った書評 (3) 第1版第1刷,第2刷への正誤表(第2版ではほとんど修正済み) (4) 代表的な問題の解答 (5) 演習問題の追加 などの情報がある.上記の(4)の解答の多くは完全なものではなく,単にヒントとして役 立つことを意図している.これは,学生たちが自分自身で問題の解答を完成する余地を, 十分に残したいという考えからである.これらの解答が,教育者や学生の要望に十分応え るものであると期待する.我々は,Webページに新しい内容を随時追加していこうと思う ので,読者は是非定期的にこのWebページにアクセスして,最新の情報を得ていただきた い.もちろん,このWebページを我々との連絡をとるために利用してもらうことも,歓迎 する.ちょうどこの第2版の準備中に,1998年の半導体国際会議(ICPS)がイェルサレム (イスラエル)で開催された.この会議はショックレイ,バーディーン,ブラッティンが トランジスターを発見(1948)した直後の1950年にReading(英国)に始まり,隔年で開 催されているもので,今回は24回目であった.ICPSの会議は,国際物理学応用物理学連盟 (IUPAP)の援助を得ている.ICPSのプロシーディングスは,この分野の進歩と,それを 推進する契機となった発見の,優れた歴史的記録である.これらのプロシーディングスの 多くが,参考文献として本書のリストに挙げられており,巻末の表では見つけやすいよう に赤で印刷してある\footnote{訳注: 訳本では太字で印刷.} .1974年以前に開かれた会議と,そのプロシーディングスの完全なリストが,1974年にシ ュトゥットガルトで行われた会議のプロシーディングス[M.H.Pilkuhn編(B.G.Teuber, St uttgart, 1974), p.1351]に載っている.ちなみに次のICPSは2000年9月18日から22日まで ,日本の大阪で行われる予定である. イェルサレムでのICPSには,42カ国から800人近い参加者があった.そこでのテーマは, この分野の最近の興味の中心を表している.そのいくつかは,この本の中で既に取り上げ られているが,もっと深く知りたい読者は,24回ICPSのプロシーディングス(World Scie ntific, Singapore)あるいは,この本の新しい版を待たねばならないだろう.キーワー ドとしては, 分数量子ホール効果と複合フェルミ粒子 メゾスコピック効果と弱局在 III-V族窒化物とそのレーザーへの応用 フェムト秒領域の輸送,光学過程 フルライト(C60から作ったナノチューブ) デバイス物理:CMOSデバイスとその未来 が挙げられる.なお,この版では,今までに我々が知り得たすべての誤りを訂正し,さら に論点を明らかにするのに有効と思われるいくつかの参考文献を追加した. 1998年9月 原著者