波束の伝播と分散

「量子の匠」練習帳



前のパネル(位相速度と群速度)では,全く形式的に 位相速度と群速度の概念のみを示す形になっていましたが,ここではもう少し具体的に, 質量を持つ量子力学的粒子の分散関係$\omega(k)=ak^2$を導入して,正弦波を重ねて作った 波束の運動を調べます.

図2.19(p.53)の(a)のような分散関係ですね.(b)の実験を実際に見ていただくのが実験パネルです. 分散の値は,この$a$に相当します(プログラムの都合により,本書中の$a$には 比例はしていますが,同じではありません). 少しだけ違うのは,無分散速度を導入しているところです.これは,光や音波のように (あるいは,このサイトの「振動と波動」のところで扱った波動のように)分散がない場合でも伝播する波を表現するため, $\omega(k)=ck$として,$c$に相当する,振動数の波数に比例する成分を表しています.

また,「位相速度と群速度」のところでもやったように,波の「軌跡」が青白濃淡プロットで描かれるようにしました. 図2.19(c)のような,波頭の間隔を調べるのは大変ですが,軌跡をよく観察すれば,ある傾向に気付くはずです.

ここでは波束を得るのに 有限な波数範囲で,ある波数の周りでガウス分布になるように正弦波を足しあわせています. \[ f(x,t)=\sum_{k=k_1}^{k_2}\exp\left(-\frac{(k-k_0)^2}{\sigma_k^2}\right)\sin(kx-\omega(k)t). \] 従って,完全に孤立した波束ではなく,周期的に並んでいます.条件によっては(波の平均伝播速度が速い時) 時間発展とともに,隣の波束が画面に入ってくるはずです.皆同じ形をしているので,着目している波束の時間発展を切り貼りして 眺めていると思ってください.