Pb/Ru/Sr2RuO4接合におけるトポロジカルな超伝導干渉
Sr2RuO4-Ru共晶系ではその超伝導転移が約3 Kから始まることが知られており、3-K相と呼ばれています。この超伝導はSr2RuO4の1.5 Kで生じるバルク超伝導とは異なり、Sr2RuO4とRuの界面で生じるノンバルクの超伝導であると考えられていますが、その超伝導性はあまり詳しくはわかっておらず、Sr2RuO4のバルク超伝導とどのように結びついているのかについても、理論的な示唆はあるものの実験的にはよくわかっていません。
そこで我々はSr2RuO4-Ru共晶系とs波超伝導体であるPbを用いて、Pb/Ru/Sr2RuO4超伝導接合を作成しました。この超伝導接合ではs波超伝導がカイラルp波超伝導によって周りを囲まれており、通常の超伝導接合とは超伝導界面のトポロジーが異なる形状をしています。この形状の特異性によりSr2RuO4における超伝導の空間的なトポロジーの変化を捉えることが可能です。 我々はこの超伝導接合の導電特性を注意深く調べた結果、その臨界電流がSr2RuO4の超伝導転移と共に急激に抑制されることを明らかにしました。この抑制はSr2RuO4における超伝導トポロジーがバルクの超伝導転移によって変化したと考えると自然に理解することができ、3-K相とバルク超伝導相のそれぞれにおける超伝導の空間的なトポロジーに違いが存在することを示唆しています(図1)。これは3-K相からバルク超伝導相への超伝導の発達と、それら超伝導相の空間的な対称性の違いを実験的に明らかにした初めての成果です。
図1: Pb/Ru/Sr2RuO4接合におけるRu周りのSr2RuO4の
超伝導位相の界面方向依存性。(a)はT>Tc、(b)はTc直下、(c)はTcよりも十分低温の超伝導位相の様子を模式的に表している。
この論文はPhysical Review B誌 [vol. 84, 060512(R) (2011)]に掲載されました。